およそ八百年前、黒木城主であった黒木助能と妻の春日はとても仲睦まじい夫婦であったという。
ある時幕府から下された命により京へのぼった助能の帰りを、春日は長く待ちわびていたが、三年の後、助能は帝から横笛の演奏の褒美として賜った美しい女官を連れ帰ってきたのであった。
嘆き悲しんだ春日は遂に、側近の女達とともに矢部川の淵に身を投じた。
その後、矢部川では大洪水がおきたり、春日の亡霊を見る者が出たりするようになり、人々は困り果ててしまった。
春日の死を深く悲しんでいた助能は、大切にしていた剣を淵に沈め、その霊をなぐさめたのだという…